「24年間」の準備

2015年9月19日、ラグビーワールドカップのイングランド大会。日本代表が南アフリカ代表を34−32で降した歴史的な試合を、僕は深夜のスポーツバーで友人と観戦しました。翌朝、起きてきた奥さんに、「ものすごいことが起こったよ!!」と興奮ぎみに伝えるわけですが、「へえそうなの」とつれない返事。日本は過去1勝しかしていない弱小国、それが、過去2回の優勝を誇る、世界が認める強豪国の南アフリカに勝ったんです。これは奇跡です。それがなぜ伝わらないのか・・・。

 

感動には準備が必要だ

なぜ、奥さんには伝わらなかったのか。感動には準備が必要だ、ということだと思います。ラグビー日本代表の快挙には、いくつもの伏線がありました(中でも、直前の苛烈な合宿に耐えた姿は涙を誘います)。24年かけて、その伏線を見てきた多くのラグビーファンだから、あの瞬間が人生の宝物になったのだと思います。そのプロセスが無いままに、興奮ぎみに感動を語られても、そりゃあポカンとするわけです。

 

いかに準備させるか

感動から逆算した準備を、観光の領域でも考えるべきだと思います。旅行商品を検討する際に、「何を見せる(体感させる)か」は割とスッと決まりますが、「どう見せる(準備させる)か」には、あまり重きが置かれていないように思います。京都や東京を旅行する際には、すでに準備を済ませている(ガイドブックや口コミサイトを参照するなど)ため、「京都らしい」伝統文化を体験できる商品や、「東京らしい」振り幅の大きい商品を用意しておけばいい。他の地域は、特定のコンテンツを持っているような場合(アート→直島、原爆ドーム→広島など)以外は、いかに準備させるか、から考えないといけません。その準備なきままにとっておきのコンテンツを見せる場合、そのコンテンツに誇りを持っていればいるほど、残念な結果になることが多いように思います。

 

料理人に学ぶ

僕は、そのヒントは料理人が持っていると思います。尖ったメイン料理と、そこに至るまでの前菜(準備)、デザート(余韻)、そしてそれらの脈略と一貫性。高い完成度と評判を得られた暁には、しっかりとした収益を挙げることも可能になるでしょう。これから、料理人や、優れたドラマの脚本家のメソッドを研究していきたいと考えています。

 

 

 

 

 

熊本県の阿蘇に行った時の写真。「火山と日本神話」とかに興味を持つと、こういう景色でさえ少し違って見えるのですよね。