「すべての仕事は3分で終わる」は本当か

3月10日(土)、友人である藤田大二郎くんの運営する京都のコワーキングスペース「The World Lounge Co&Co KYOTO」で、大学時代の同級生である岡田兵吾くんの出版記念講演会を開催しました。

彼の本が「すべての仕事を3分で終わらせる――外資系リーゼントマネジャーの仕事圧縮術」であると聞いたときに、最初は、聞きなれない「圧縮」という言葉が気になりました。「仕事を圧縮して生産性を高める」とは「一分一秒の処理速度を高める」ことだと感じ、とても慌ただしく、息苦しく、せわしない印象を持ったのです。その慌ただしさを象徴するのが本のタイトルである「すべての仕事は3分で終わる」であり、そんなのできるわけないやろ、と。

しかし、本を読んでみて、その印象は覆されました。「仕事圧縮術」は、「仕事分解術」と言い換えてもいいと思います。輪郭がぼんやりとした「仕事」というかたまりを分解することで、ゴールと期限が明確になり、1つ1つの「仕事」の正体(輪郭)が見えてくる。それらを、重要度と緊急度の掛け合わせによってやるべきこととそうでないことに分け、やるべきことに集中してインパクトのある成果を挙げることが可能になる、という理屈です。分解によって①そもそもの仕事を減らす(ノンコア業務をやらないと決める)→②コア業務に要領よく取り組む(要領をつかむまでは量をこなす)→③成果にインパクトをもたらすポイントに集中する(そのために何をもって成果なのかを定義する)という順番。「3分で終える」は、「3分で終え(られる単位まで分解す)る」という意図なんだと思います。

 

ポイントは分解すること

この仕事術は、分解することにポイントがあります。それは、兵吾の「一年二ヶ月、営業成績ゼロ」時代(自慢のリーゼントも心なしか低くなる日々)に行った「仕事の見える化」にルーツがあるそうです。結果が出ない日々に、自己防衛のためにも、自分の仕事の進捗を他人に説明できるように可視化したこと。それによって、何にどれだけ時間がかかっているのか、自分とハイパフォーマーとの違いは、具体的に、どこの、何か。それが可視化されることで、効果的な改善策が検討できたのだと思います。また、分解することで、最初の一歩を踏み出すことが容易になる。何かに着手する時に、まず3分、工程を真剣に考えてみるだけで、劇的に生産性が高まる予感がします。

ただ、この仕事術には準備が必要で、正しく分解するようになるまでには、まず量をこなし、慣れ、コツ・ポイント・要領をつかむことが必要だと。生産性を高めるためには、最初は生産性を度外視しなければならないのかもしれません。このプロセスが無いままに、プロフェッショナルは産まれないのかもしれないし、残業を減らす議論はできないなと感じました。

 

自分らしい人生を歩むために

この本で共感したのは、「なんのために生産性を高めるのか」に重きを置いている点です。死ぬ間際に、どんな風景を見たいか。人生、やりたいことをやりきって死ぬために、中身の濃い仕事をしていきたい。あらためてそう思いました。貴重なメッセージを受け取られた土曜日の午後でした。