興味を持った理由

先日、東京から来られた大学生の方々を対象に、1時間半ほどお話しさせていただく機会をいただきました。テーマは「観光業界の実際について」。インバウンド向け体験施設「KAFU」の立ち上げから撤退までの起承転結と、そこで学んだことを整理し、赤裸々にお話しさせていただきました。そして、お話が終わってエレベーターまで参加者を見送ったその時。3年間を総括してアウトプットし切ったことへの反動からか、「学びたい」と強く感じました。身銭を切ってサービスの一部始終に携わった今なら、とても多くのことが吸収できると思ったのです。

そうすると、ふとパソコンに表示されているセミナーの広告に目が止まりました。「小さな会社に『ブランド』を生み出す技術」。僕たちも極小の会社ですが、お付き合いするクライアントも大企業ではありません。「小さな会社に『ブランド』を生み出す技術」を学ぶことは、クライアントのためにも、自分たちのためにもなると思いました。

ブランドの理解度

「ブランド」について、まったく知識がないいうわけではありませんでした。リクルートで営業をしていたとき、クライアントに「採用ブランドの向上」という課題設定を提案していたことがあります。「求職者に◯◯というイメージを持ってもらうため、◯◯しましょう」という文脈です。でも、今考えるとブランドの重要性を理解して提案していたというよりも、何となくそれが本質的だと感じていた(正しくは、社内のエースがこぞってこのテーマを扱っていたことに感化された)から、といった程度でした。この機会に、一度「ブランド」について学んでおこう!と思いました。

ブランディングとは何か

講師をつとめられた西澤明洋さんのことは、それまで存じ上げませんでした。が、冒頭の自己紹介をお聞きしてから、俄然、期待が高まりました。ご自身の気づきを共有し、そこから新たな気づきを得るサイクルを楽しんでおられる。その意図が伝わり、いい時間になる予感がしました。

(以下、セミナー内容の抜粋になりますが、個人的な感想を含む内容です。ただしい情報は、エイトブランディングデザインさんのWebサイトをご参照ください!)

セミナーの内容は、まず、「ブランディングとは何であって、何ではないか」から始まりました。「ブランド品」という言葉が浸透しているが故、「アパレルやファッションに関するもの」「高級なことを示すもの」という一般的な先入観があるが、それはブランディングの一部分である、と。また、ビジネスの世界では「今時の経営手法」「マーケティング戦術のひとつ」と認識されることもあるが、それもまた同様である(一部である)と。西澤さんが定義するならば、「ある商品やサービス、もしくは企業の全体としてのイメージに、ある一定の方向性を作り出すことで他者と差異化すること」であり、ひとことで言うと「差異化」のことである、と。そういえば昔、ブランドの語源は他の所有者と混同しないために家畜へ「焼印すること(burned)」であると教わったことを思い出しました。

なぜブランディング(ブランド力の向上)が大切なのか

「差異化する」「他と違うことが伝わる」と、どんないいことがあるのでしょうか。それを、西澤さんのクライアントである「山形緞通(やまがただんつう)」さんの事例をもって示してもらいました。結果としては「売上が拡大し、新規雇用が増えた」ということです(売上のグラフをスライド見せていただきましたが、すごい角度でした)。その結果を生んだのは、「関係者の間で山形緞通のイメージが明確になった」ことによって単品ではなくシリーズで注文が入る等の効果があったからであり、それは「他との違いが伝わる」というプロセス(=ブランディング)が成功したからに他なりません。また、副次的な効果として、きっと山形緞通さんの社員は、ここで働くことの意義を再認識し、あらためて誇りを持ったのではないかと思います。そして、そんな社員がいる会社を目指した人も間違いなく増えたと思います。順番としては、ブランディングが成功した→売上が拡大したであって、結果が出るまではいろんな課題があったことと思いますが、ブランドの持つ力が明確に伝わってくる事例でした。

ブランディングをするための3つの条件

どんな商品、サービス、会社でもブランディングできるのか。そうではないと西澤さんは言っておられました。3つの条件があるそうです。

まずは、「経営者の熱い想い」。ブランディングは「いかに伝わるか」です(一方でマーケティングは「いかに伝えるか」)。西澤さんが「伝言ゲーム」と例えているとおり、自分が届けたいメッセージを他者に委ねるしかない。伝言ゲームを成功させるには、「最初の人」が「シンプルなメッセージ」を「世界中のだれよりも強く」発信する必要があり、その役割を担えるのは経営者であるということだと思います。

次に、「ものが本当にいいこと」。ここは講義で聞き逃したところですが、説得力のあるものの良さがないと、「伝言ゲーム」の過程に耐えられず、メッキが剥がれるということなのではないかと思います。

最後に「コミュニケーションチーム」の存在。伝言ゲームを正しく設計し、遂行する能力のあるチームが必要であるということです。ここはプロのサポートが必要なところだと思います。

ブランド力はどうやれば高まるのか

では、いかにしてブランディングしていくのかということになりますが、ここは西澤さんのメソッドになるところです。

「フォーカスRPCD」と整理されており、①【フォーカス】訴求するコンテンツの魅力を1点に集中する→②【リサーチ】周辺状況をつぶさに調べる→③【プラン】良いところかつ違うところでポジショニングする→④【コンセプト】考え方、有りようを言語化する→⑤【デザイン】具体的なすべてに展開してゆく、という手法。⑤の【デザイン】がゴールなのではなく、そこは状況の変化に応じてメンテナンスしていくこと(サイクルをまわす)を視野に入れるそうです。

西澤さんは、セミナーの最後に「ブランドとはなにか」をあらためて定義されており、「約束と生き様」だと。自分が何者であるかを社内外に宣言し、一挙手一投足、その宣言に違わぬよう行動することで培われるものだとおっしゃっていました。なので、ブランディングは専門部署で完結するものではなく、経営層と連携しながらやっていくべきものである、と。納得。

まとめ

  1. ブランディングとは「差異化する」ことである
  2. ブランディングは企業の経営課題を解決できる具体的な手法となり得る
  3. 自身の有りようを社内外に宣言し、その約束を守り続けることからブランディングは始まる

自社にどう活かすか

自社(自分)が他社(他者)と比べてどう差異化できるのか、まずはそこを言語化するところから始めたいと思います。僕も株式会社みたても紆余曲折いろいろありますが、その中で「いいところ」かつ「違うところ」をピックアップしてポジショニングすることで、紆余曲折をユニークさに変換できるのではないかと感じています。それが何かはまだ言葉になっていませんが、「戦略と戦術を具体的に結びつけて業績にコミットするところ」あたりなのかなと。また、今回学んだことを整理して、当社のクライアントさんとのやり取りに役立てていきたいと思います。