「キンコ」という名前の由来

四国への出張にあたって、前から訪れてみたかった高松の「Kinco. hostel+cafe」に1泊。ここの代表をされている小林さんとは、友人を介して知り合い、2015年に一度京都に来られた時にお話したことがありました。「会社の事務所兼倉庫として使われていた建物を、宿泊施設に見立てるんです」「その会社が金庫の会社なんでキンコという名前なんです」といったホステル構想のお話が面白くて、また、その後Facebook等でアップされる内容が面白くて、また、紹介した人がその後リピーターになったと伺っていて、ぜひ行ってみたいと思っていました。

意図とデザイン

目の前のバス停からは高松駅へ一本、岡山へも1時間というアクセスの良さだそうです(ちなみに駐車場が1日400円という安さでびっくり)。事務所としての面影を残しつつ、シンプルでスタイルのある外観。大きなガラスから中の雰囲気が伺い知ることができて、入りやすくはないけど入りたくなる感じがしました。設計は同じく香川・高松出身の岡昇平さん。高松市の温浴施設「仏生山(ぶっしょうざん)温泉」を自ら設計・運営されている方だそうです(仏生山温泉も後日訪れましたが、素晴らしい空間でした)。チェックインしてから、しばらく1階のカフェで過ごしていましたが、地元の高校生がだべっていたのが印象的。「おしゃれな若者やバックパッカーの隣で、地元のおじさんが方言でしゃべれる、そんな空間にしたい」という小林さんのイメージをとあるWebサイトで読んでいたので、(おじさんではないけれど)地元の人と旅行者が同居する空間がほんとうにできているんだなと。僕にとってはこの空間は気持ちが良く、また手に取りたい書籍がいっぱい並んでいて、半日くらい読書で過ごせそうです。2階は半分が宿泊スペース、もう半分がイベントスペース。がらんとした空間は、多様なイベントに対応できそうでした。ちなみに瀬戸内芸術祭のあった昨年は連日満室が続き、稼働も順調だそうです。

感じたこと

まず「こんな空間を作りたい」というイメージがあって、その先にデザインがある、そうあるべきだと感じました。当たり前かもしれませんが。小林さんが持つイメージを具現化するための、大小様々な課題。そこに取り組みつつ、幾多の想定外の制約条件が降りかかってくる。実際、Kinco.の設立にあたっては、古い建物ならではの法的な障害があったり、建築資材の高騰時期と重なったり、宿泊施設の営業許可が厳密化する時期と重なったり、大変だったそうです。時には押し切り、時には妥協し、イメージを見つめて当事者としてやり切ったから、あの空間が具現化するんだなあ、と。当社にも「この空間をどう使えばいいか」というご相談をいただくこともありますが、順番としてはまずイメージありきなんだと。だから、「こんな空間が求められている」という想い/覚悟があらかじめある場合には、そういったご相談にも乗れるなと思いました。

高松の夜

その夜、小林さんとご飯を食べて、その辺の苦労話なんかを聞きつつ日本酒をたくさんいただいて、最後はうどんでシメて、楽しい夜となりました。なぜか、鶏のレバ刺しの写真しか残っていないのが口惜しいです。みんな美味しかったし、2軒目の鶏の天ぷらは絶品でした。