息子がこの本を選んでくれた

ラグビージャーナリストとして活躍する村上晃一さんの著書。息子である優太がこの本を題材として読書感想文を書くつもりだと聞いて、とても嬉しく思った。なぜなら、僕がラグビーを通じて感じてきた「大切なこと」に、息子にも触れてもらうことができると思ったからだ。また、存在は知っているけど理解はしていない「ラグビー憲章」について学ぶ機会にもなると思った。将来、自分の会社の軸として、ラグビー憲章に掲げられている5つの要素を据えたいと思っていたからだ。というわけで、僕も久しぶりに読書感想文を書くことにした。

ちなみに、「はじめに」を読んでいて、ラグビーW杯がまだ8回しか開催されていないことを「あ、意外にまだ少ないんだな」と感じた。僕が中学生だったころ、家族ぐるみでお付き合いしていたラグビーファンのお兄さんが、たいそう興奮して「ラグビーのW杯が開催されるんだ!」と言っていたことを思い出す。そのお兄さんから、イギリスの旅行土産として、真っ赤なウェールズのラグビージャージをもらったことを覚えている(それからウェールズは僕にとって少しだけ特別なチームだ)。

 

キャプテン

さて、ラグビーのルールブックには、ルールの前に「ラグビー憲章」が記されていて、ラグビーに関わる人たちがルール以上に大切に考えなくてはいけない5つの言葉について説明がある。品位、情熱、結束、規律、尊重。これらの言葉を眺めただけで、世界中の人に愛されるラグビーというスポーツが持つ「大切なこと」の存在を感じる。

この本では、その大切なラグビー憲章に触れる前に、「キャプテン」という章を設けてある。ラグビーにとってキャプテンはそれだけ特別な存在であり、それは2015年の南アフリカ戦で見せた「ブレイブコール」が象徴していると思う。ラグビーは本来自主的なスポーツであり、一度ゲームが始まったら、監督ではなくキャプテンとフォロワーたちが意思決定していく。幾多の選択の場面を通して、チームは成長していく。その過程を象徴するのがあのシーンだ。本当に、素晴らしいものを目撃したと思っている。

ところで、姫野選手に触れたところでは、「情熱を注ぎたいと思えるものを探してください」という言葉が強く印象に残った。僕は、いままでの人生で「やらねばならぬこと」にもあまりにも多くの時間を割いてきたように思う。それは間違いではない。自分の可能性は自分ではわからないのだから、思い込みや決めつけをせず、いろんなことにチャレンジすることは悪いことではない。でも、人の目や評価を気にせずに、「やりたいこと」に一心不乱に取り組んできたなら。もう少し違った人生があったかもしれないと思うことがある。もちろん人生100年時代、まだ折り返し地点にも到達していないので、これから取り組めるが、特に身体に関わることは若いうちにやっておいたほうがいいと感じた。優太にも、若いうちにしかできないことの中で、「情熱を注げるもの」「心のそこからやりたいと思えるもの」に出会ってもらいたい。楽しいと思えること、がんばろうと思わなくても頑張れるもの、そういうもの出会ってもらいたい。

 

品位

ラグビー憲章については、まず「品位」について説明されている。ラグビーは「紳士のスポーツ」と言われる。これはイギリスの階級社会の中で、クリケットやラグビーをやるのがアッパークラスのためにそう言われるのであり、僕のようなアジアの庶民にはなんら関係のないことである。それでも、この言葉はラグビーに関わるひとのプライドをくすぐる。ラグビー憲章の最初に「品位」がくるというのは、とてもいいなと思う。日本で最初にラグビー殿堂入りした坂田さんの紹介の中で、たくさんの「トライ」を記録したが、坂田さんは決して笑わず、はしゃがなかったことを紹介されていた。「ラグビーはトライしたものがえらいのではない」との恩師からの教えがあったそうだ。ここは、実社会生活でもたいへん示唆に富む。また、「品位」を象徴するエピソードとして、坂田さんにポジションを獲られた選手が、「おめでとう」と笑顔で握手を求めてきたシーンが描かれていた。「自分だったら同じことができるだろうか」と自分に問うたそうだ。ラグビーでは、正々堂々とプレーした者同士、フェアに行動した者同士はすぐ友達になることができる。言葉や民族の壁を超えることができる。品位というのは、ラグビー憲章の中でも最初に挙げられる、人として大切にしなければいけないものだ。

 

情熱

女性のラグビー選手の「情熱」が描かれている。彼女の言葉で印象に残ったのは、「オリンピックを目指す日々に意味があった」ということ。それを、娘さんからもらったプレゼント(桜のメダル)をきっかけに思い出したそうだ。誰だって勝ちたい。でも、相手がいることなのでいつも勝てるわけではない。負けた時にどういう態度をとるかが大切であるし、そもそも勝ち負けを超えたところを目指さないと情熱は燃やし続けられないのではないか、とう感じた。

 

結束

ニュージーランドから日本に移住した1人のラグビー選手を通して描かれている。そこでは、ラグビーでは、ナショナルチームでも国籍や民族で区別しないことが紹介されている。日本もこれから移民を受け入れていくだろうが、その中で、どのように地域や企業で受け入れ、ビジョンを共有するのか。その最先端事例がラグビーのナショナルチームだと思う。ラグビーがひとりではできないように、誰1人、ひとりで有意義な社会生活を送っていくことはできない。助けること、助けられること、それが当たり前。

 

規律

ここでは、ある高校のラグビー部監督を通して、強い組織における規律が紹介されている。一人一人が責任をもって自分の役割を果たす。チームワークとは、みんなが決めた約束を守り、練習したとおりに仲間を信じて、助け合ってプレーすること。「規律とは思いやり」という言葉が印象に残った。自分がチームの中での責任を果たし、それをチーム全員でやることが大切、ということだろうか。

 

尊重

ここでは、ある大会で、同点によって勝者を抽選で決めたときのシーンが描かれている。勝利を引き当てたキャプテンは、チームに静かに事実を伝え、そのことを伝えたチームメイトは、静かに涙を流したそうだ。それを見ていた観客席も、静かに喜んだそうだ。それは、相手チームへのリスペクトがある。こういうシーンは、何回か見た記憶がある。

 

最後に出てきた恩師の名前

最後に「あとがき」を読んでいたとき。県立芦屋高校の恩師である高木先生の名前を見つけた驚いた。この本のラグビーの歴史を教えたそうだ。高校時代、3年制のときに赴任してこられ、ラグビーの何たるかについていろいろ教えてたが、どれだけ耳を傾けることができたか。近くにいい見本があるのに気づかないことは人生の損失であり、また同時によくあることだ、と感じた。

2018年11月、ラグビーの聖地・ロンドンのトゥイッケナムスタジアムで観戦した、日本代表対イングランド代表のテストマッチ

 

8万人の「Swing Low」に鳥肌がたつ

 

日本代表には武道精神が流れているように感じます

 

偶然、クラブチームでご一緒していた先輩と出会いました

 

1日で9杯(約6リットル)のビールを飲みました