世界遺産・熊野古道の玄関口である和歌山県田辺市。熊野古道を歩くために市内を訪れた旅行者の、滞在時間の延長と地域消費を促すことを目指し、当社は英語版のグルメマップ本制作をご支援しました。本記事では、その背景や課題、解決に向けたアプローチをご紹介します。
地域の課題:素通りするインバウンド
今回のクライアントは、一般社団法人田辺市熊野ツーリズムビューローさまです。同団体は熊野古道を擁する和歌山県田辺市で観光地域づくりを担う、日本屈指のDMO(Destination Management Organization)で、持続可能で質の高い観光地づくりを目指しています。田辺市は広大な面積に多彩な観光資源を有し、世界遺産「熊野古道」へのゲートウェイとして国内外から多くの旅行者が訪れます。 しかし、旅行者はJR紀伊田辺駅に到着すると、市内を素通りして山間部(熊野古道)へ入ってしまうという課題がありました。
解決策:グルメマップ本の制作
課題に対する解決策として、クライアントは英語版グルメマップ本の制作を企画されていました。JR紀伊田辺駅近くにある飲食街「味光路」には、200軒以上の多様な飲食店が軒を連ねていますが、前述のとおりインバウンドは田辺市街に滞在せずに熊野古道へ向かってしまうため、地元の店舗での消費機会が十分に生まれていない状況。そこで、飲食店を英語で紹介する冊子を作成し、旅行者に市内を周遊してもらうことで地域での消費を促進する狙いです。店の情報や地図が掲載されたこのガイドブックによって、言葉の壁を越えて外国人旅行者が地元の飲食店に足を運びやすくなることを目指しました。
実行プロセス
クライアントと協議し、本プロジェクトは以下のプロセスで進行しました。
- 全国事例の事前調査:日本各地で発行されている「グルメマップ冊子」をデスクリサーチ。9件をピックアップし、その制作目的や構成要素、デザインを分析しました。その上で、本プロジェクトの目的に照らし合わせてフレーム(構成案)を設計。
- 取材・撮影:編集チーム(ライター・カメラマン・デザイナー)を組成し、3日間で田辺市内の18店舗を取材・撮影。ライターが各店の店主やスタッフにヒアリングを行い、カメラマンが料理や店内の写真を撮影、デザイナーがテキストとビジュアルが調和する誌面デザインを手掛け、魅力的なガイドブックとなるよう努めました。ポイントは、一人のライターが全件取材をすることで、それぞれのお店の紹介文章に違いが出るように書き分けたことです。とても労力のかかることですが、これをしたことで、単なるお店の紹介にとどまらず、読む人にとって興味をそそる内容となりました。
- 全体調整と英訳:掲載店舗間で紹介する料理やメニューが重複しないよう調整し、各店ならではの特色が際立つラインナップとしました。また、取材で得た記事コンテンツはプロの翻訳者が英語に翻訳。
- 支援ツールの制作:ガイドブック本を見たインバウンドが店を発見できるよう「店外掲示ステッカーの制作」、注文をサポートするために「メニューの英語化」も実施。インバウンドの動線まで踏まえて設計しました。
その他、先進的アクティビティ運営の視察として、大阪で人気のナイトタイムツアー「OSAKA DEEP DIVE NIGHTTIME FOODIE TOUR」に参加。ツアー創設者にツアーアテンドしていただき、立ち上げ期のストーリーや、どのように最初の顧客を獲得したか、これまでのトラブルとその対処方法など、生々しい話をヒアリングすることができました。
グルメマップ本のページネーション(16ページ構成)
プロジェクトの成果
グルメマップ本の制作・配布により、早速いくつかのポジティブな効果が現れています。ガイドブックを見て飲食店を訪れるインバインドが増え、地域の飲食店に新たな客層が呼び込まれました。また、実際に注文がされているとのことで、効果が現場で実感されているようです。インバウンドにとっても、現地の美食を安心して楽しめる環境が整ったことで満足度向上が期待できます。
編集チーム
今回のグルメマップ本の制作にあたり、各分野のプロフェッショナルにも協力いただきました。プロジェクトメンバーとクライアント、地域の事業者が一体となって取り組んだことで、質の高いコンテンツ制作とスムーズな現場取材が実現しました。
本件についてのお問い合わせ
本プロジェクトに関するお問い合わせは、 info@mitate.kyoto までお気軽にお寄せください。